旅行者は必ずみたことあるはず！街中にたくさんある「チャナン」

みなさま　初めまして。ウブド在住のゲストライターナビィと申します。
ウブドの外れ、白鷺で有名なプトゥルー村に暮らし、日々バリ芸能の勉強に勤しんでおります。私の趣味は供物の一種”チャナン”を作ること。

皆様もバリを旅する中で空港、レストラン、ホテル、至るところでチャナンを見たことがあると思います。

今回はバリの生活に切っても切れない必需品”チャナン”について触れてみたいと思います。それでは「バリ島旅行のみかた」スタートです

チャナンとはなんぞや？

まず、こちらをご覧ください。チャナンには色んな形がありますが私が好きな形はこれです。”チャナン”とは椰子の葉でカゴを作り、そこに数種類の花びらを載せた供物で、1日の始まりのお祈りの際にはもちろん、オダラン（210日に一度巡ってくるお寺の創立祭）やお寺以外での神事、冠婚葬祭、沐浴などで聖地を訪れる際や悪霊払い（わりとよくある）など、どんな神事にも使われる基本の供物です。
一般的な家庭では朝炊きたてのご飯と一緒に１回、夕方までにチャナンのみの1回、1日2回お供えをしますが、1回のお祈りに最低でも30個程度使われているようです。

チャナンを作ってみよう

今回の仕入れはスカワティの市場で。
まずは材料ですが、カゴの部分はブスンという椰子の葉を使用します。カゴに盛り付けるお花は4種類～6種類。細く切ったパンダンという葉、そしてポロサンなど。
※ポロサンはシバ、ウィシュヌ、ブラフマのヒンドゥの三大神を表し上下（天と地）を表す役目を持つ、一番大事なものです。
これらは全て市場か小間物屋さんで買ってきます。

ナイフ、ホッチキス、ホッチキスの芯は三種の神器。白い器に乗っているのがポロサン
ブスンを数枚重ねて適当な長さに切ったものを二つに折り、江戸家猫八先生の切り絵のごとく（切り絵はハサミですが）葉にナイフを入れて造形して行きます。

椰子の葉３枚を重ねて切って二つに折り作りたい形になるようにナイフで切ったところ。1枚の椰子の葉は茎を割くと２枚に分かれ、それを二つ折にすると全部で１２枚になる。
椰子の葉は意外と繊維が硬くナイフが上手く入らず、作り始めた頃の私は一体どれだけのブスンを無駄にしたことか・・・
500個くらい作った頃から、だんだんと無駄なくブスンを使えるようになって来ました。

次は造形したブスンを止めてカゴの形を作ります。チャナンマスターはスマッという竹ひごのようなものを使いますが最近はホッチキスを使う人が多いようです。（わたしもホッチキスを使う事が多いです）
ここまで来たらほぼ完成、チャナンのカゴの部分が出来上がりです。

円形になるようにホッチキスで形成中。一番緊張するところです。

葉先を円の根元に入れて形を作ります。

そうすると、このようにカゴが完成！

次にカゴの中にポロサンを置きその上にお花を盛りつけます。
使われる花は、白か薄いピンク、黄色、赤、青のお花を主に使いますが、これは色が東西南北を、方角はそれぞれ『太陽の神』『土の神』『火の神』『水の神』を表し、ポロサンは北側に向くように置きます。
（バリ人は自分から見て聖山アグン山を北とし東西南北を決めているのですがこれは山（北）が清浄、天界であるというバリヒンドゥ独自の教義に由来するものです。因みに海（南）は不浄とされています。）

最後にパンダンを載せて完成。

(左) 日々のお供えに使う一般的なチャナン　(右) お寺に持参するちょっと豪華なチャナン

チャナンは各家にある屋敷寺などの神聖とされる場所だけではなく、コンロや冷蔵庫、車、コメびつや水の入ったガロンなど人間が生きていく上で大事な物、そして地面の悪霊にも「悪さをしないで下さいね」という想いを込め、決められた場所それぞれに聖水とお香を添えて、お香の煙を手で扇ぎ神様に届けます。
ここでも火（ブラフマ）水（ウィスヌ）風（シバ）が表されています。
知り合いのおじいちゃんは『生き物も物体もこの世界の全ては火と水と風という元素で出来ているのでその３つを神様とし、そして感謝をすることがバリヒンドゥの根幹の一つにある』と言います。チャナンはバリヒンドゥの世界観を反映した小さな宇宙と言えると思います。

大切なのは「美しいものを捧げたい」というこころ

チャナンに祈りを込めて

地域や家庭によってチャナンの形や大きさ、盛り付け方や一緒に供えるものは微妙に違っていますが、「美しいものを神様に捧げたい」という想いは同じだと思います。”バリ”という名前は「捧げもの」という言葉が由来しているという説があり、島そのものが捧げものなのかもしれません。

チャナンをお供えしている人を見たらぜひ、足を止めてその所作、表情をそ～～～っと見てみて下さい。神と共に生きるバリ人の素顔を垣間見れると思います。ゲストライターナビィでした！